25 DPCの導入 業務変化の予測が大切

 DRG-PPSの研究に始まった包括支払制度は、DPCという日本独自の診断群による診療報酬支払方式となった。DPCの特徴は、診断群による1日当たりの包括支払いである。さて、DPCとはいったいどんなものか。本日は、久々の勉強会。DPCのことを教えてもらうため、奈須は医事課へ行った。

奈須:今日は、DPCのことを教えてほしいんだ。

石崎:先週の経営会議でDPCを導入するかどうか話し合いがあったけど、近いうちにDPCを導入することになるよ。

奈須:早いね。ところで、何で、近々なの?

石崎:それは、俺が企画しているからだよ。

奈須:そういうことか...。それより、DPCについて簡単に教えて、詳しいことは、DPCの本で調べるよ。

石崎:DPCは、簡単に言うと、入院における包括支払方式だよ。病気によって、1日の支払額が決まる診療報酬だね。乱暴な言い方をすると、1日の支払額が決まっているので、検査をたくさんやっても、薬をたくさん投与しても支払額が変わらないんだ。

奈須:手術も包括になるの?

石崎:手術は、包括にならないよ。大まかに説明すると図10)に示すように、DPCは、基本診療料と特掲診療料の一部が包括されていることがわかる。包括される部分は、入院料や薬、検査などが中心で、出来高の部分もあるよ。出来高は、手術料やリハビリテーション料、検査でも1000点を超えるようなものなどが出来高となっている。DPCは、出来高がドクターフィーで、包括はホスピタルフィーとして、分けられているんだ。

奈須:全部、包括じゃないんだ。そう言えば、DPCで算定するようになると、病院の売り上げが上がるという話があるけど、どうなの?

石崎:そういう話もあるけど、これは、病院の努力次第かな。図11を見てもらうとわかるけど、平均在院日数を短縮すると、1日当たりの単価が増加するようになっている。でも、全国の病院が努力して、平均在院日数を下げると、DPCの各疾病の平均在院日数が下がるようになっている。だから、ずーっと平均在院日数を下げなければならない追いかけっこになってしまうんだ。うちの病院がDPCによる算定をするに当たって、注意することはその覚悟があるかどうかかな。

奈須:看護業務で変わることはあるの?

石崎:外来部分は、包括にならないので、術前の検査は、外来で行うようになるよ。それと、平均在院日数が短縮されるということは、病棟の利用率が下がる危険性がある。逆に、病棟の稼働率を維持するれば、入退院数が増加する。入退院数が増加するということは、病棟は、相当忙しくなるよね。あとは、ジェネリック医薬品が増加すると思う。これまで、医薬品は、処方されるとある程度、利益が確保できたけど、DPCでは、包括支払いのため算定ができないから、病院の持ち出しとなってしまう。薬剤料は、包括となるから、医薬品は、先発品よりジェネリック医薬品の方が、病院経営上は、得になる。医薬品によっては、5分の1になるからね。そうすると、院長からジェネリックにしろといった指示が出ると思うよ。どの病院でも、DPCによるジェネリック医薬品の切り替えは、病院経営側と医局の間でトラブルになってるね。

奈須:今の業務で一杯いっぱいなのに、入退院が増えるということは、すごいことになりそうね。7対1看護にならないといけないね。

石崎:その通りだよ、このままDPCに移行すると看護師が辞めるかもしれないと斎藤部長が発言していたな。

奈須:さすが、斉藤部長ね。

石崎:あとは、DPCのコードは、病院間で治療のができるようになる。例えば、表7)のようにA病院とB病院を比較したとする。外科系の疾患だったとすると、奈須は、どちらの病院で手術する?」

奈須:それは、A病院だよね。

石崎:これが、DPCの怖いところで、情報が公開されるようになると、症例数の少ない疾患の患者が来なくなるかもしれない。ただし、病院としては、A病院をベンチマークし、平均在院日数を下げる努力をするようにもなるけどね。

奈須:DPCについては、大体わかった。詳しいことは、本で少し調べてみるね。

 入院の診療報酬をDPCで算定する病院が増えてきました。DPCを導入することは、事務部門がしっかりしていれば、容易に導入できますが、問題は、導入後に起きる病院の業務の変化です。看護部や薬剤部、臨床検査部などは、DPCの導入後の変化を予測しなければ、現場が混乱します。